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工場の悪臭対策|発生原因と効果的な臭気対策のポイント

工場では、原料の保管や加工工程など、さまざまな場所でにおいが発生します。
悪臭は粉塵のように床へ堆積せず、数値でも捉えにくいため、対応の優先順位が下がりやすい課題といえます。
しかし、悪臭を放置すると近隣からの苦情につながるだけでなく、原因となる物質によっては働く人の作業環境にも影響します。

この記事では、悪臭が生まれる工程、対策を進める手順、臭気を処理する設備の選び方までを整理します。
自社で確認すべきポイントを整理し、専門メーカーへ相談する際に必要な情報を把握できる内容です。

工場の悪臭はなぜ問題になるのか|苦情の現状

工場の悪臭は、近隣の生活環境に影響し、苦情につながることがあります。また、工場・事業場から発生する悪臭は、地域によって悪臭防止法の規制対象となります。

まずは、工場に関する悪臭苦情の状況と、対策を検討するうえで確認しておきたい法令について解説します。

工場に寄せられるにおいの苦情はどれくらいあるか

環境省は毎年度、悪臭に関する苦情の状況を取りまとめています。令和6年度の主な発生源別の内訳は次のとおりです。

発生源苦情全体に占める割合
野外焼却22.0%
サービス業・その他17.2%
個人住宅・アパート・寮13.1%
その他の製造工場6.2%
食料品製造工場4.7%

苦情総数11,076件のうち、工場・事業場に関するものは5,368件で、全体の48.5%を占めました。苦情総数は前年度比5.6%減少した一方、食料品製造工場に関する苦情は10.1%増加しています。

出典:環境省「令和6年度悪臭防止法等施行状況調査の結果について」

 

においを放置した場合に考えられる3つの影響

悪臭への対応を先送りにすると、近隣からの苦情だけでなく、作業環境や事業運営にも影響する可能性があります。主な影響は次の3つです。

  • 近隣への影響:苦情が行政へ寄せられた場合、立入検査や行政指導につながることがある
  • 作業環境への影響:溶剤の蒸気などが作業場に滞留すると、作業環境の悪化につながる
  • 事業運営への影響:悪臭による苦情が続けば、近隣への対応や設備改善が必要になる場合がある

令和6年度は立入検査708件、行政指導615件が実施され、改善勧告は5件、改善命令は1件でした。行政から指導を受ける前に発生源や原因を確認し、必要な対策を検討することが重要です。

工場のにおいに関わる法律

工場の悪臭対策では、周辺の生活環境を守るための規制に加え、原因となる物質によっては、作業者の健康を守るための法令にも対応する必要があります。主な違いを整理します。

対象主な法令主な内容
工場・事業場から発生する悪臭悪臭防止法規制地域内の工場・事業場について、敷地境界線、気体排出口、排出水に規制基準が定められる
有機溶剤などを扱う作業労働安全衛生法・有機溶剤中毒予防規則など対象となる作業では、局所排気装置などの設置や作業環境管理等が求められる

 

悪臭防止法では、都道府県知事(市の区域内は市長)が規制地域を指定し、地域の実情に応じて規制基準を定めます。規制方法には、アンモニアや硫化水素などの特定悪臭物質の濃度による規制と、人の嗅覚を用いて算定する臭気指数による規制があります。採用されている規制方法や基準は地域によって異なるため、工場所在地を管轄する自治体への確認が必要です。

工場で悪臭が発生する主な原因を工程から探る

悪臭の原因は業種で決まるものではなく、どの工程で何を扱っているかによって変わります。同じ食品工場でも、原料の保管場所と加工工程では性質が異なります。

においが出やすい箇所を工程別にまとめました。

においが出やすい場所よくある工程・設備
原料や材料原料置場、原料投入口、貯留槽
加熱や乾燥を行う工程乾燥炉、焼付乾燥炉、焙煎工程、溶解炉
薬品を使う工程塗装ブース、印刷機、溶剤洗浄工程
排水や廃棄物排水処理施設、汚泥の貯留槽
設備そのものダクトの継ぎ目、ファンの軸まわり

自社の工程と照らし合わせながら発生源となる可能性のある箇所を確認することで、調査範囲を絞り込めます。複数の工程から異なる性状の臭気が発生している場合は、それぞれに適した捕集・処理方法を検討する必要があります。

 

原料や材料そのものからにおいが出ている

加工前に置いておくだけでにおいを放つ原料は珍しくありません。食料品製造所では原料置場や生ごみ置場が、飼料・肥料製造工場では原料投入口や粉砕機が発生源と考えられます。

保管方法や滞留時間を見直すことで、においの発生を抑えられる場合があります。原料の入れ替え頻度や保管容器の密閉状況などを確認することが重要です。

 

加熱や乾燥の工程でにおい(こげ臭)が強くなる

熱を加える工程では、アルデヒト類(こげ臭)のにおいが強く発生することがあります。塗装・印刷工場では乾燥や焼付の工程、ゴム工場では加硫炉などが該当します。

当社の事例では、アスファルト製造工場から多量のオイルミストと超高濃度の臭気が発生していました。粉塵や油分も同時に出るため、前段で取り除く設計が求められます。

 

塗料や洗浄液などの薬品から出るにおい

薬品を扱う工程では、使用量がわずかでもにおいが作業室全体へ広がることがあります。塗装の仕上作業を行う工場では、塗料の容器と乾燥中の製品から蒸発した分が室内に充満していました。

基板加工を行う工場では、溶剤洗浄工程で発生したガスが室内へ漏れ、作業環境の改善が必要となっていた事例もあります。有機溶剤などを扱う場合は、臭気対策だけでなく、対象物質に応じた法令への対応も必要です。

なお、においの強さと人体への有害性は必ずしも一致しません。においが弱くても健康への影響に注意が必要な物質があるため、使用している物質や作業内容を確認したうえで、臭気対策(環境省)と作業環境対策(厚生労働省)を分けて検討することが重要です。

 

排水や汚泥からにおいが発生する

排水処理施設や汚泥の貯留槽も、工場で悪臭が発生しやすい場所です。排水に含まれる有機物が分解・腐敗すると、人体に影響のある硫化水素やアンモニアなどのにおい成分が発生することがあります。

また、ごみ処理施設では、ごみの貯留や投入、処理工程などで強い臭気が発生する場合があります。施設内に臭気が広がるだけでなく、外部への漏えいを防ぐためにも、発生源での捕集や適切な脱臭処理が重要です。

排水や汚泥が長時間滞留していないか、処理設備が適切に稼働しているかを確認し、発生源そのものを改善できないか検討することが重要です。

 

設備の劣化でにおいが漏れている

脱臭装置を設置していても、においが収まらないケースがあります。この場合、ダクトなどの搬送経路や処理装置に原因がある可能性も考えられます。主な確認箇所は次のとおりです。

  • ダクトやファンのうち、圧力がかかる部分からの漏れ
  • ダストの蓄積や結晶の析出による、ダクトや装置内部の詰まり
  • 水や薬剤、燃料の供給不足
  • 寿命を過ぎた吸着剤や触媒の使用

漏れが生じている場合は、ボルトの増し締めやガスケットの交換などが必要です。また、ダクトや装置内部の詰まりによって風量が低下すると、発生源で十分に捕集できなくなります。設備の更新を検討する前に、既設設備の状態を確認することも重要です。

工場の悪臭対策は4つの手順で進めるのが基本

対策を検討する際は、装置を選ぶことから始めるのではなく、事前調査から維持管理までを一連の流れとして捉える必要があります。

ここでは、その流れを4つの手順に置き換えて示します。

手順やること
①調べる何のにおいが、どの工程から、どれくらい出ているかを確認する
②減らす原料や作業方法を見直し、においを出さない工夫を検討する
③集めるフードとダクトで、においを逃がさず集める
④処理する適した方式を選び、装置を設置して管理する

順序を飛ばして装置を選ぶと、必要な処理能力と設備の仕様が合わず、十分な効果が得られないことがあります。まずは発生源や臭気の性状を把握し、発生量を減らせないか検討したうえで、捕集方法や必要風量、処理方式を決めていくことが重要です。

 

においそのものを減らせないか見直す

悪臭対策では、まず発生源から出るにおいを減らせないか検討します。原料の変更や作業方法の見直し、機械の配置変更などが対策として考えられます。

発生する臭気を既設ボイラーの燃焼用空気として取り込むなど、既存設備を活用できる場合もあります。発生源での対策を検討したうえで、十分な改善が難しい場合は、脱臭設備による処理を検討します。

 

においを逃がさず集める仕組みをつくる

高性能な処理装置を設置しても、発生したにおいを十分に捕集できなければ、期待した効果は得られません。発生源の位置や作業方法に合わせてフードを設置し、においが作業場へ広がる前に捕集することが重要です。

フードは、発生源との位置関係や囲い方によって主に3種類に分けられます。

 

  • 囲い式:発生源を全面的に覆う形式
  • 外付け式:発生源に隣接し、側方や下方から吸引する形式
  • レシーバー式:ガスの流れに沿って吸引する形式

 

フードの種類や局所排気装置の仕組みについては、「局所排気装置とは?仕組みや種類、設置が必要なケース・法令を解説」で詳しく紹介しています。

 

当社が対応した塗装工程の事例では、発生源を囲うことで手元が暗くなり、作業品質への影響が懸念されていました。そこで透明なアクリル板を使用した囲い式フードを製作し、作業性を確保しながら有機溶剤臭を改善しました。フードを設計する際は、捕集性能だけでなく、実際の作業への影響も考慮することが重要です。

納入事例:有機溶剤中毒予防規則 局所排気装置

 

集めたにおいを処理する装置を決める

臭気の処理方式に、あらゆる現場で使える万能なものはありません。臭気成分や濃度、温度、粉塵・ミストなどの共存物質によって適した方式が異なるため、条件に応じて複数の処理方法を組み合わせることもあります。

当社が設備の更新を担当したアスファルト製造工場では、前段でオイルミストを除去したうえで、活性炭吸着装置と化学吸着脱臭フィルターを組み合わせました。

これにより、前段設備のメンテナンス負担を軽減するとともに、電気ヒーターを使用しない構成へ変更しています。

納入事例:アスファルト製造排ガス用脱臭装置

悪臭対策設備の選び方と維持管理のポイント

悪臭対策設備を選ぶ際は、処理性能や価格だけでなく、設置スペースや運転費、維持管理まで含めて比較することが重要です。

ここでは、処理方式の選び方から設置条件、維持管理まで、導入時に確認したいポイントを整理します。

 

においの種類に合った処理のしかたを選ぶ

処理方式は、においの成分と濃度によって適否が分かれます。代表的な方式を比較しました。

処理方式仕組み主な特徴・注意点
吸着式活性炭・化学吸着フィルターなどの吸着剤に臭気成分を吸着させるガス性状に応じて吸着剤を選定する。粉塵・ミスト・タールなどを含む場合は前処理が重要
洗浄式悪臭ガスを薬液と接触させ、化学反応によって除去する高濃度の悪臭ガスにも用いられる。対象成分に応じた薬液の選定・管理が必要
直燃式悪臭成分を高温で酸化分解する燃焼可能な臭気成分の処理に用いられる。燃料消費などの運転条件を考慮する
触媒酸化式触媒を用いて臭気成分を酸化分解する直燃式より低い温度で処理できる。触媒に影響する成分(触媒毒)の有無を確認する

 

このように、それぞれの原理を理解せずに方式を選ぶと、効果の得られない設備になってしまいます。

関連ページ:悪臭・脱臭装置

 

設置条件と維持管理にかかる費用を確認する

設備の導入費用だけで判断すると、運転や維持管理にかかる費用が想定を上回ることがあります。設備を選定する際は、次の項目も含めて確認することが重要です。

  • 設備費と運転費、点検に要する費用と工数
  • 充填物や機器部品の交換サイクル、計器類の校正の頻度
  • 設置場所の広さ、高さ制限、床の耐荷重
  • 電気・水・燃料といった供給設備の有無と、排水処理の要否

 

処理設備を選ぶ際は、必要な脱臭性能を確保したうえで、初期費用だけでなく、運転費や吸着剤・薬液などの交換費用、点検にかかる工数まで含めて比較することが重要です。必要以上に高い処理性能を求めると、設備の大型化や運転費の増加につながる場合もあります。

また、設置スペースや電気・水・燃料などの供給条件、排水処理の要否によって、採用できる方式は変わります。臭気成分や濃度だけでなく、設置条件と維持管理まで含めて処理方式を検討することが重要です。

 

設備を入れたあとの点検を続ける

脱臭設備は、導入後も適切な性能を維持できるよう、継続的な点検とメンテナンスが必要です。吸着剤の劣化や薬液濃度の変化、ダクトの詰まりなどが生じると、処理能力や風量が低下し、再びにおいが漏れる原因になります。

点検する項目や頻度は処理方式や設備の仕様によって異なります。日常的に運転状況や異常の有無を確認するとともに、吸着剤・薬液・触媒などの状態、装置入口と出口の臭気などを定期的に確認し、必要に応じて交換や整備を行うことが重要です。

なお、有機溶剤などを扱う設備では、局所排気装置等について法令に基づく定期自主検査が必要となる場合があります。対象となる設備や点検・検査については、「局所排気装置とは?仕組みや種類、設置が必要なケース・法令を解説」で詳しく解説しています。

 

現場を見てくれる会社に相談する

悪臭対策では、規制基準への適合だけでなく、実際の現場でどのようににおいが発生し、どこまで広がっているかを確認することも重要です。臭気の発生状況は、稼働する設備や時間帯、風向きなどによって変化するため、数値だけでは原因や必要な対策を判断しにくい場合があります。

また、臭気成分や濃度だけでなく、発生源の位置や必要風量、粉塵・ミストなどの共存物質、設置スペースまで確認したうえで、捕集方法や処理方式を検討する必要があります。そのため、設備を選定する際は、現地調査から設計、施工、導入後のメンテナンスまで対応できる会社に相談することが重要です。

まとめ|工場の悪臭対策は原因を突き止めることから

工場の悪臭対策では、装置の性能や価格を比較する前に、においがどこで発生しているかを特定することが重要です。原因を把握しないまま設備を導入しても、十分な効果が得られない可能性があります。要点を整理します。

ポイント確認する内容
原因を工程で切り分ける原料、加熱、薬品、設備の劣化のどこから出ているか
発生源の見直しを先行原料や作業方法で減らせないかを検討する
集める仕組みから設計フードとダクトで逃がさず捕集できているか
においに合った処理を選ぶ成分や濃度に応じ、方式の組み合わせも検討する
総費用と点検体制で比べる運転費・交換費用・点検体制まで含めて確認する

工場の悪臭対策では、所在地の規制基準を確認したうえで、においが発生している工程や原因を特定し、発生抑制・捕集・処理の順に対策を検討することが重要です。設備を導入する場合も、臭気の性状や濃度、風量、粉塵・ミストなどの共存物質、設置条件まで確認したうえで、現場に合った方式を選定する必要があります。

臭気対策の設備を検討される際は、集塵装置株式会社へご相談ください。現地の状況を確認し、臭気の発生源や性状、設備条件に合わせて、捕集から処理まで適したシステムをご提案、法令を考慮したコンサルティングを行います。

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